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●色紙はそんなに高くない!?

よくある光景コラム2・イラスト
似顔絵を描きに行って必ずあるのがこのような光景である。
親子連れがやってくる。母親が似顔絵を描いているのに気付いて値段を見る。

「似顔絵やん!¥1000やって。描いてもらおか。」

そして、僕の前に来て子供と一緒にとか、一枚の色紙に復数人を描いて欲しいという。
・・・そこで母親に、

「お一人様¥1000ですのでお二人だと¥2000になりますけど、よろしいですか?」

と聞くと、まるで信じられないものを見るような目で僕を見るのである。そして「それなら子供だけでいい」と言うか、すぐにその場を去っていくのである。
それはまるで、「色紙一枚に描くんだから値段も色紙一枚分なのは当然!」というニュアンスがヒシヒシと伝わってくるのである。口には出さないけれど、こんな光景に出会うといつも苦々しい思いをする。
一枚の紙の中に複数のものを描こうとすると、そこには『画面構成』という事がより密接に関係してくる。つまり、いかに収まりよく紙の中に二名の顔を描くか、事前に考えて描かないと、後で描こうとした人の顔が紙に入りきらなかったり、あまりに大きすぎて窮屈に感じたりする訳である。一枚の色紙に一人の場合だとそんなに考えなくても収まりよく描けるのだが、二名以上だと構成を考えるだけでかなり気を遣うので、描き終わった後はぐったりと疲れてしまう。僕の描く似顔絵は、一般にイメージされている似顔絵のように写真のように描くというようなスタイルではないので、一見簡単にサッサと描いているように見える。そりゃ、下描きもせずに描き始めるのだから、絵をやった事の無い人からすれば簡単に見えてもおかしくはないかも知れない。

・・・しかしである、こんな例え話しはどうだろうか?

家族で食事をしに中華レストランに行く。チャーハンを二人前頼んでみると、大きなお皿に二人前のチャーハンが盛り付けられてきた。それを見て母親はウェイターに向かって信じられないような目で「お皿が一枚なのになんで値段が二人分なん?皿が一枚やったら値段も一人分のはずやろ!!」と食ってかかり、家族は憤然としてその場を後にした。

・・・この例え話が現実だとしたら、皆さんはどう思われるだろう?「うんうん、そんなん当たり前や」とか、「ようやった!お母さん」とかは思わない筈である・・・、多分。二人前の料理を頼めば、料金も二人分だということは、皆さんの中の一般常識の中にあてはまることだろう。じゃあ何故、似顔絵だとこの常識があてはまらないのか?・・・僕は理解に苦しむのである。

いつか、このことで食ってかかってくるお客さんがいたらどんな話をしようかと、密かに考え続けた例え話だから、賢明な読者の方々には、まるでス〜と砂に染み込むように理解頂けただろう。

似顔絵の値段は何の値段?
前に同じことで、お客さんから言われた言葉にハッとしたことがあった。それは「色紙代が¥1000なんやろ?」ということだ。そうか、お客さんは似顔絵代というのは、色紙代の事だと思っていたのか・・・。じゃあ僕の執筆料は無料ということか?と、脱力した。それ以来、自分で似顔絵用の看板やポップを制作する時は、今まで「似顔絵 ¥1000」とか書いていたのを、「似顔絵執筆料 お一人様¥1000」と書き、その下にもし一枚の色紙に二名以上描く場合はこのような値段になりますという絵までつけている。それでもなお、看板やポップを良く読まないで同様なことを聞いてくるお客さんが後を絶たない。確かに僕自身、何かを買いにいっても、店頭の掲示物等を熟読した上で買っているかというと、必ずしもそうではないので、あまり人の事を言えない訳だが・・・。
ここだけの話、色紙代って幾らくらいか知っているだろうか?通常、店頭で小売りしている時の価格って、だいたい¥200位である。でも製造会社から直接大量に購入すると、一枚当たり¥50位に迄なるのである。つまりは、色紙代なんて殆ど無いに等しいものなのだ。従って似顔絵代というのは、執筆料、分かりやすくいうと技術料とでも言えばいいのだろうか。冒頭で僕は似顔絵を下描きもせずにサッサと簡単に描いている様に見えると書いたが、そういう風に描けるようになる為に約二十年くらいの訓練を経てきたという事は、あまり表には出ないことだ。何もそれを声だかに叫ぶつもりは無いのだけど、「簡単に見えるもの程、実は難しい」ということを分かって欲しい。

皆がみんな、こんなお客さんで無いのはよく分かっている。「お一人様¥1000ですのでお二人だと¥2000になりますけど、よろしいですか?」と聞くと、「もちろんそうでしょう?」といってくれる方も沢山いる。そういう方に出会うとやっぱり「よ〜し、いい絵を描くぞ!」っと心の中で再度、気合を入れ直している。何もそういうお客さんの時だけしかいい絵を描かないぞ!と思っている訳ではないですぞ...、念のため。

数年前の大みそかの夜に似顔絵を描きに行った時、友達六名を一枚の色紙に描いて欲しいというグループが来た。「それは難しい。それにそれぞれの顔がサイコロ位の大きさになります。お値段もお一人¥1000ですので¥6000ですよ。」と、やんわりとお断りしようとしたがそれでもいいというので仕方なく描いたことがあった。もちろん下描きは無しで、である。結果上手くいって喜んで帰って行ったが、一体誰があの似顔絵を持って帰るんだろう?描いている最中も「俺が預かっとくわ」、「いや、俺やって」と話していたけど・・・。

・・・あの似顔絵の行く末は、未だにちょっと気になっている。

【おわり】

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